会社設立 Q&A
お答えします
会社設立を一つの手続きとして丸ごと頼める資格はなく、工程ごとに頼める人が法律で決まっています。定款の作成は行政書士のほか弁護士・司法書士・公認会計士に頼めます。設立登記の申請代理を頼めるのは、司法書士、弁護士、そして会社その他法人の設立を委嘱された場合にその附随行為として行う公認会計士です。税理士と行政書士には登記の代理は頼めません。設立後の法人設立届出書などの税務届出を頼めるのは税理士だけ、社会保険の手続を頼めるのは社会保険労務士だけです。誰に頼むかは、相手が持っている資格の組み合わせで決まります。
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一解説
会社設立は一つの手続きに見えますが、実際には別々の法律が支配する工程が並んでいます。定款を作る、株式会社なら定款の認証を受ける、設立登記を申請する、設立後に税務署や自治体へ届出を出す、従業員を雇うなら社会保険に加入する。それぞれの工程に、他人の依頼を受けて報酬を得て行える人が定められています。
会社法26条1項のとおり、株式会社の定款は発起人が作成します。合同会社などの持分会社は、575条1項のとおり社員になろうとする者が作成します。作った定款は、株式会社では30条1項により公証人の認証を受けなければ効力を生じません。持分会社の定款には認証がありません。ここまでは誰に頼まなくても自分でできます。
他人の依頼を受けて報酬を得る側には、それぞれ根拠の法律があります。定款は権利義務に関する書類ですので、行政書士法1条の3第1項により行政書士が作成できます。弁護士、司法書士、公認会計士にも、それぞれの法律に別の根拠があります。
もっとも厳しく区切られているのが登記です。司法書士法3条1項は、登記手続について代理することと、法務局に提出する書類を作成することを司法書士の業務と定めています。73条1項は、司法書士でない者がこれらの業務を行うことを禁じ、違反には78条1項により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金があります。
73条1項には、他の法律に別段の定めがある場合を除く、というただし書があります。弁護士法3条1項の「一般の法律事務」がこれに当たると解されており、弁護士は登記を扱えます。公認会計士については、法務省民事局長の回答があります。昭和25年7月6日民事甲第1867号は、公認会計士が会社その他法人の設立を委嘱された場合に、その附随行為として登記申請書類の作成と申請代理を行うことを、差し支えないとしました。根拠として引かれるのは、財務に関する調査、立案、相談を業とできるとした公認会計士法2条2項です。
この回答が認めているのは、会社の設立を委嘱された場合の附随行為としての登記です。設立登記だけを切り出して頼めるものではありません。公認会計士に頼むときは、定款の作成を含む設立の全体を委嘱する形になっているかを確かめてください。回答に付いている二つの留意点は、下の一次情報の出典欄に載せています。
同じ問いを税理士について照会したのが、昭和35年3月28日民事甲第734号の民事局長電報回答です。公認会計士にはできるが税理士にはこのような設立と附随行為はできない、という照会に対し、そのとおりと回答しています。税理士法は、司法書士法73条1項のただし書にいう他の法律の別段の定めに当たらない、という整理です。
行政書士も同じです。行政書士法1条の3第2項は、書類の作成であっても、他の法律で制限されているものは業務として行えないと定めています。登記申請書は法務局に提出する書類で、司法書士法が作成を司法書士の業務としていますので、行政書士の業務には入りません。行政書士に頼めるのは、定款の作成と、設立後に営業許可などの許認可が要る場合のその申請です。
「税理士事務所に会社設立を丸ごと頼んだ」という場面で実際に起きているのは、多くの場合、登記の部分を提携する司法書士が受けている、という分業です。見積書や説明の中で、登記を誰の名前で申請するのかを確かめてください。
設立登記が終わると、税務署、都道府県、市区町村への届出があります。法人設立届出書や青色申告の承認申請書を、他人の依頼を受けて作成することは、税理士法2条1項2号の税務書類の作成に当たります。52条は税理士でない者がこれを行うことを禁じ、違反には59条1項4号により2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金があります。司法書士や行政書士には、税務届出は頼めません。
従業員を雇うなら、健康保険と厚生年金保険、労働保険の手続があります。社会保険労務士法2条1項1号と1号の2は、これらの申請書の作成と提出の手続の代行を社会保険労務士の業務とし、27条が他の者に禁じています。なお、社長ひとりで役員報酬を出さないうちは、被保険者になる人がいませんので、加入の手続そのものが要りません。
ここまでを並べると、次のようになります。定款の作成から設立登記までを一人に頼めるのは、司法書士、弁護士、または設立を委嘱された公認会計士です。そこに設立後の税務届出まで足すなら、税理士の資格も持っている人でなければ一人では完結しません。社会保険の手続まで足すなら、社会保険労務士の資格が要ります。
格安をうたうサービスの料金が工程ごとに分かれているのも、無料の設立ツールが「登記の申請はご自身で」と案内しているのも、この決まりがあるためです。料金の安さの多くは、値引きではなく、引き受けていない工程があることから来ています。
依頼先を選ぶときに最初に見るのは、料金ではなく資格の表示です。誰がどの工程を、誰の名前で行うのか。それが説明の中に書かれていれば、頼む範囲と料金を並べて比べられます。三章に、依頼先の探し方をまとめています。
※本記事は制度の一般的な説明です。個別の事情への当てはめは、司法書士・公認会計士などの専門家、または法務局・公証役場にご確認ください。
二一次情報
会社法 第26条(株式会社の定款の作成)
第二十六条 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
2 前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
会社法 第30条(株式会社の定款の認証)
第三十条 第二十六条第一項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。
2 前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第三十三条第七項若しくは第九項又は第三十七条第一項若しくは第二項の規定による場合を除き、これを変更することができない。
会社法 第575条(持分会社の定款の作成——合同会社を含む)
第五百七十五条 合名会社、合資会社又は合同会社(以下「持分会社」と総称する。)を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
2 前項の定款は、電磁的記録をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
行政書士法 第1条の3(業務——官公署に提出する書類等の作成)
第一条の三 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
司法書士法 第3条第1項第1号・第2号(業務——登記手続の代理・法務局提出書類の作成)(抜粋)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
司法書士法 第73条(非司法書士等の取締り)
第七十三条 司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 協会は、その業務の範囲を超えて、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。
3 司法書士でない者は、司法書士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
4 司法書士法人でない者は、司法書士法人又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
5 協会でない者は、公共嘱託登記司法書士協会又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
司法書士法 第78条第1項(罰則——第73条第1項違反)(抜粋)
第七十八条 第七十三条第一項の規定に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
弁護士法 第3条(弁護士の職務)
第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。
公認会計士法 第2条(公認会計士の業務——監査証明業務と第2項の付随業務)(抜粋)
第二条 公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。
2 公認会計士は、前項に規定する業務のほか、公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることを業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
昭和25年7月6日 民事甲第1867号 民事局長回答(公認会計士が会社設立を委嘱された場合の登記申請書類の作成・申請代理)(抜粋)
計理士又は公認会計士、会計士補が会社その他法人の設立を委嘱された場合その附随行為として登記申請書類(定款、株式申込書、引受書、創立総会議事録等の添付書類を含む)の作成及び申請代理を為すことは、司法書士法(昭二五、五、二二法律第一九七号)第十九条の正当の業務に付随して行う場合に該当し差支えないと考えられますが、いささか疑義がありますので御回示願いたく照会いたします。
(注) 回答——照会に係る標記の件は、貴見の通り積極に解して差し支えない
昭和35年3月28日 民事甲第734号 民事局長電報回答(税理士は設立登記の申請代理をできない)(抜粋)
計理士または公認会計士が会社その他法人の設立を委嘱された場合、その附随行為として登記申請書類の作成及び申請代理をなすことができるが、税理士についてはこのような設立及び附随行為はできないと思料いたしますところ、いささか疑義が生じましたので至急電信にて回報下さるよう照会します。
(注) 回答——貴見のとおりと考える
税理士法 第2条第1項(税理士の業務——税務代理・税務書類の作成・税務相談)(抜粋)
第二条 税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十一号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)
税理士法 第52条(税理士業務の制限)
第五十二条 税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。
税理士法 第59条第1項第4号(罰則——第52条違反)(抜粋)
第五十九条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
四 第五十二条の規定に違反したとき。
社会保険労務士法 第2条第1項第1号・第1号の2(業務——申請書等の作成・提出手続の代行)(抜粋)
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識できない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。
一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。
社会保険労務士法 第27条(業務の制限)
第二十七条 社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。
※引用は原文のままです。読みやすさのため改行位置を調整し、一部を抜粋している箇所があります。最新の内容は必ず出典元のページでご確認ください。
三代行の頼み方
設立の手続はご自身でもできます。定款の作り方や電子定款の扱い、設立後の税務の届出まで通して任せたいときは、どの工程を誰に頼めるかを確かめたうえで専門家に依頼できます。ここでは工程ごとに料金と実績を見比べて選べるココナラを載せます。
推奨
運営:株式会社ココナラ(東証グロース上場)
ココナラ
スキルシェアマーケットプレイス最大手。リンク先は「会社設立」の検索結果で、司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士が出品する定款の作成、電子定款の電子署名、設立登記、設立後の税務届出、社会保険の加入手続を、対応範囲・料金・納期・評価で見比べられます。オンラインで完結する出品が中心のため、お住まいの都道府県を問わず依頼先を探せます。
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